理想の接客サービス

 喫茶店を営んでいて日々思うことがあります。

 果たしてうちの接客サービスは正しいのか?

 理想の接客サービスとはなんだろうか?

 喫茶店とは言いながらも自家焙煎の珈琲専門店であり、スイーツにも拘りを持っているつもりですので、提供している商品の味と品質にはそれなりに情熱を注いでおります。

 ただ、特に最近ですが、それだけでは多くのお客様に「選ばれる店」にはなれないのではないか?という危機感を強く持つようになりました。

 これも、コロナ禍がもたらしたわざわい故のものでもありますし、開業して10年が経ち、今思えば「ああすればもっと良かった」と思う要因のほとんどが、接客サービスについての失敗、後悔の念、心残りの記憶ばかりだからです。

 そもそも接客サービスと言いましても、「接客」と「サービス」は全く別の意味を持つ言葉です。

 すなわち、「接客」とは直接お客様に接してお客様と商品・店をつなぐ行為を言い、「サービス」とはお客様に対して心を配り、尽くすという行為を言います。

 これら二つの言葉を一つにしているのも、両方の行為が密接不可分に必要であるからだと思います。

 ところで、当店は開業当初より広告宣伝をほとんどして参りませんでした。理由として多額の広告費を支払う余裕がなかったこともありますが、もう一つには、実際に来店して頂いたお客様にまずは気に入って頂き、さらには紹介していただく事。つまり、お客様に自ら宣伝をして頂く戦略をとったからです。

 これは確かに時間のかかる迂遠な方法ではあります。ただ、私なりに考えたのは、そうやって自発的に「この店を勧めたい」と思われる接客サービスを心がけることが、自分自身や従業員、ひいては店を成長させる要因になるだろうということでした。

 その努力の結果として、たくさんの葦島ファンを作れたらどんなに嬉しいだろうと想像して希望に胸を膨らませたものでした。

 しかし冒頭申し上げた通り、開業以来この10年について思い返しますと、とても理想には程遠いものだと反省ばかりです。

 そこで、今改めて理想の接客サービスを考え直して、日々実践して行こうと思います。

 いくら提供するメニューが美味で、設えられた空間が素晴らしくても、接客が売らんかな主義だったり、サービスに心がこもっていなければ、それは私が目指す上質なサービスではありません。

 いつも私が唱えている「時間を紡ぐ珈琲」とは、提供する珈琲やスイーツの味だけでなく、心から寛げる空間と、「また訪れたい」「大切なあの人に紹介したい」と思われるような心のこもった接客サービス、これらが調和した結果、実現される寛ぎの時間を概念化した言葉です。

 そして大切なのは、言葉だけでなく行動。

 行動は言葉より雄弁なり、ですね。

 もちろん言葉がなければ正しく想いは伝わりませんが。

店主