珈琲とお菓子のペアリング一考察 〜婦人画報3月号に寄せて〜

 

 2月1日発売の婦人画報3月号に掲載された記事について、そのいきさつと内容を書かせていただきます。

 この度の婦人画報編集部からの依頼は「珈琲と合うお菓子とのペアリングを紹介してもらいたい」というものでした。

 このような依頼はほとんど今までなかったものですから、正直最初は驚きましたが、常々珈琲と相性の良いお菓子(スイーツ)を検証してはおりましたので、まあそれほど難しいことではないと思い、ご依頼を受けることに致しました。

 ただ「私が選ぶもので本当にいいのか?」という不安は多分にありましたので、たくさんの候補を挙げて提案するのではなく、「この珈琲豆には、このお菓子が最も相応しい」と言えるものに絞って、その理由も明確に示せるものを厳選して提案しようと思いました。

 以前にもこのブログで紹介したように、特定の珈琲豆に合うスイーツというものは確かにあります。あくまで大まかにではありますが、酸味の強い珈琲には、フルーティなスイーツ、例えばレモンケーキや果実の入ったスポンジケーキが合うと思いますし、一方苦味の強い珈琲には、ザッハトルテのような濃厚なものや生チョコレートなどが合うと思います。

 また、カステラのような洋菓子と和菓子の中間的なお菓子ですと、どちらのタイプの珈琲にも合いますね。

 そして和菓子については、非常に面白い取り合わせが数多くあります。

 まず、珈琲に合う和菓子として代表的なのが餡子を使用したものです。餡子というのは意外と珈琲、それも苦みの強い珈琲によく合います。大体甘くて食感のしっとりしたものは珈琲に合いますので、餡子などはそのまま当てはまるでしょう。京都の老舗のお茶菓子屋で選ぶ生菓子など、おすすめしたいものはたくさんあります。

 また、ボーロのような南蛮焼き菓子もいいですね。京都には蕎麦ぼうろという銘菓がありますが、これはビスコッティのような感覚で食せられ、珈琲との相性は良いと思います。

 羊羹も大変面白い珈琲のお供です。つるんとした食感が瑞々しく、いい塩梅の甘みのものをコクの強いストロング珈琲と合わせて頂きたいです。

 また、ニッキを使ったお菓子、言わずとしれた「生八ツ橋」ですが、こちらはマンデリンのような苦くてボディの強い珈琲に本当によく合います。奇しくも当店では「マンデリンとシナモンショコラ」のセットが多くのお客様に支持されております。

 さて、掲載されたペアリングですが、今回婦人画報へ提案させて頂いたのが「マンデリンSG」と、葵家やきもち本舗さんの「やきもち」です。

 この「やきもち」は良質な滋賀県江州米から作った餅で、 北海道産小豆で作る自家製つぶ餡を包んだ上賀茂名物です。白餅とよもぎの二種類ありますが、どちらも素朴さと上品さを兼ね備えたちょうどいい塩梅なお味です。

 そしてペアリング推薦の理由として、編集部には以下のようにお伝えしました。

「苦味の効いたコクのある珈琲と餡子は意外に合います。とりわけ葵家さんのやきもちは香ばしく、しっとりやわらかな食感で、ほんのり甘く薄いお餅と控えめな量の餡子は、ストロングなマンデリンとの相性が良いのです。サイズ感もちょうど良く、美味しく上品に食べられます。もしアイス珈琲となら、やきもちをほんの少し焼いて頂くのもおすすめです」

 これからも珈琲とお菓子のペアリングというテーマで、豊かで楽しい珈琲時間を提案できるよう、日々精進を重ねて参ります。

店主