割烹珈琲

 先日のこと、ある常連のお客様に「葦島さんのスタイルって、割烹料理店みたいですね。目の前で大将が調理をしているのが見られる料理屋さんとか、寿司屋さんみたいで安心感があります」と言われ、なるほどと同意したと同時に開業前の準備期を思い出しました。

 確かに当店のように、店内どの場所からも見ることのできるカウンターで、豆の計量から始まり、豆をミルで挽き、ハンドドリップして提供する、その一連の流れ、所作を全てお見せできるスタイルはさながら割烹料理店を想起させるかもしれません。

 ただ、このスタイルに至った理由としては、割烹料理やお寿司の店をイメージしたからではなく、自分が客という立場で考えた時、珈琲を手仕事で淹れる全行程を見られたとしたら、楽しいだろうし安心するだろうと考えたからに過ぎません。

 私はこの店を立ち上げる前は、喫茶店はおろか飲食店に勤めた経験がほとんどありませんので、そもそも何がスタンダードスタイルなのかを知りませんでした。

 珈琲の焙煎も、抽出法も独特のスタイルと言われますが、関連する書籍を読み、長年自分自身が多くのお店を訪れて見聞きした経験をもとにゼロから構築したものです。

 珈琲以外については以前の職における経験で、事業を営むにあたり必要な衛生管理の知識や法的知識は十分得られていたので、喫茶店を立ち上げるにあたり、新たに経営面での知識はそれほど必要なかったのが幸いでした。

 思い起こせば開業準備期、一番大切に考えたことは「お客様が安心して来店できる喫茶店をとことん追求する」という方針でした。それをもとに店舗デザインや調理スタイルを固めていきました。

 その結果が今の喫茶葦島のスタイルですが、お客様から「割烹のような安心して訪れられる店」という意味でおっしゃって頂いたことは望外の喜びです。

 新ジャンルの珈琲店名称として「割烹珈琲」というのもいいなと思いました。

店主